スペシャル:id Voice:id Voice:vol.2 立川裕大:デザインプロダクトのアイディーサイト

Home > スペシャル:id Voice:id Voice:vol.2 立川裕大

id Voice LONG INTERVIEW〜ライフスタイルを豊かにする『モノ』『コト』はどう生み出されるのか。携わった人々の想いを、今まで関わったモノ・ヒト・コトとのつながりを通して届けます。

立川裕大さん写真

立川裕大さんインタビュー

株式会社 t.c.k.w 代表取締役

デザインディレクター

▼プロフィールはこちら

ホテル「CLASKA」のリノベーション企画をはじめ、ライフスタイルショップ「CIBONE」の家具マーチャンダイジング、「amadana」の前身である東芝のキッチン家電「atehaca」の立ち上げ、家具開発ディレクションなど、様々なメディアで話題となったデザインプロジェクトを手がけてきた立川裕大さん。現在も「YUEN'TO」の開発ディレクションのほか、日本の伝統工芸の技術をデザインのツールとして世界中の建築家やスタイリスト、デザイナーなどに向けて発信する「ubushina」というプロジェクトを自社でプロデュースしている。「全て短期的な成果や企業の利益だけではなく継続的に、世の中にとっていい作用をもたらすこと、社会に貢献することを心がけています」と話す立川さんに、真のデザインについて、また、デザイナーがすべきこと、クリエイティビティが持つ可能性などについて伺った。
立川裕大さんインタビュー写真

デザインは社会を改善するための手段である

___まず、立川さんの仕事内容について教えてください。
主に企業の外部ブレーンとして家電、家具、照明などインテリア関連の企画、商品開発のディレクションを行なっています。私はデザイナーではないので、自らデザインをすることはありません。あくまでも企業や行政、地域が主体で、私はそういったモノづくりのプロジェクトや展覧会などのコンセプトを決めて最後まであらゆる場面に携わります。日本の地場産業と関わることも多く、「ubushina」 というプロジェクトを自社で立ち上げました。また、行政からの要請を受け、「miyakonjo product(みやこんじょプロダクト)」というデザインプロジェクトにも参画しています。これは宮崎県都城市の「クワハタ」と「浜畑産業」という木工メーカーが共同で行なっているプロジェクトなんですが、目的は「産地の活性化」。宮崎県は日本を代表する杉の生産、加工地で、地元の“杉”と職人の“木工技術”を積極的に活用し、現代の生活にフィットする都城ならではの家具の開発を目指しました。そのほか、オートクチュールとなるプロジェクトのマネジメントもしています。東京・目黒のホテル「CLASKA」のリノベーション企画と家具開発のディレクションは話題になった仕事のひとつです。

「ubushina」プロジェクト アイテム画像

「ubushina」日本の伝統的手仕事や高度な技術の革新性を探り、現代のデザインと結び付けながら新たなプロダクトを生み出すプロジェクト
http://ubushina.com/

___デザイナーとしてではなく、プランニングやディレクションを中心に展開しているのですね。
では、立川さんのプロデュースする企画において、デザインはどういった位置づけですか?
デザインは社会を改善できる手段だと思っています。ホテル「CLASKA」の仕事を例に挙げて説明しましょう。このプロジェクトは、客足が遠のいてしまったホテルと廃れつつある日本の伝統技術という、二つの失いかけた資産に価値を与えて復活させることが我々にとってのコンセプトでした。達成するために、建物そのものをリノベーションするだけではなく、漆や錫・真鍮、ブナコといった伝統工芸を空間や家具・照明などの素材として使用しています。伝統工芸や高度な手仕事を駆使し、ホテルとしての機能を満たした結果、美しいデザインが生み出されたのです。 すなわち、雰囲気のあるデザイン性の高いホテルをねらったわけではなく、コンセプトから必然に導かれたもの。美しいことはその結果であって、大切なのは、デザインをすることで社会や生活を良い方向へ変えることができるかどうかなのです。
___そういった考えを持つようになったきっかけなどありましたか?
きっかけはイタリアのデザインを知ったこと。特にデザイン界の巨匠でもあるアキッレ・カスティリオーニ氏に強く影響を受けました。イタリアで実際に何度かお会いして、社会を改善していこうというカスティリオーニ氏の姿勢に強く共感したんです。今から60年以上前、戦後の混乱期に庶民にとって必要だったものは安くて良質なものでした。その時代に、絵が描けて建築の設計もできる多くの才能を持たれたカスティリオーニ氏は、インダストリアルデザイナーという職業を選択されたんです。“安くて長く使える クオリティの高いものを提供したい”という強い目的で生まれたものは、結果として美しいデザインだったという流れ。だから、カスティリオーニ氏が作ったもので意味のないものは一つもありません。そんなカスティリオーニ氏は私の憧れの人であり、仕事における指針となっています。

切実にクリエイティビティを必要としている世界がある

___では、今、世の中を変える、よくするために出来ることは何だと思われますか?
立川裕大さんインタビュー写真
流行を作り出すだけの表面的なデザインについては、根本的に考え直す必要があると思います。なぜならデザインを必要としている地域や世界は、ほかに確実にあるんです。たとえば、貧困に喘いでいる第三世界。海外ではすでに、第三世界の人々が使う“安くて壊れにくく長く使えて、安全で便利な道具” をデザインするプロジェクトが進行しています。たとえば、水を持って運ぶのではなく転がしながら運ぶタイヤ型にデザインされた大きな容器や、一度にたくさんの荷物が運べる荷台を大きくした自転車とか、子どもが遊ぶことで水が地下から汲み上げられる遊具など。その水槽の側面に設けられた広告スペースから、設置費も捻出しているんです。もちろん、日本でも社会活動や環境問題に関心のあるデザイナーも多いと思います。けれども、「お金にならないからできない」というのが現状でもあります。私自身も、ボランティアとして活動していくことはできないと思う。だからこそ、私は現状を打開し、世の中がよくなるプロジェクトを実行できるように、お金が流れる仕組みを考えています。それを含めてクリエイティブですから。
___仕組みから考えることは、決して簡単ではないと思います。
今後CSR(企業の社会的責任:Corporate Social Responsibility)の取り組みに熱心な企業も増えてきています。そういった企業と考え方を共有して一緒に活動していくのも方法のひとつ。是非ご一緒したいですね。CSRにクリエイティブを注入するようになったら、だいぶ世の中も変わると思います。企業にとっても、本業を活かしたCSRで収益や社会的評価、イメージを上げられることはメリットですし、いい企業の必須条件になっていますよね。たぶん、今後は大小関わらずすべての企業に課せられてくるんじゃないかな。この傾向は一段と加速していくと思っています。

世界で起きていることと自分がデザインするものは、決して無関係ではない。

___プロジェクトを実現させるために立川さんが必ず行なっていることやコツはありますか?
立川裕大さんインタビュー写真
いつも大、中、小の順番で考えています。まず、なんでこのプロジェクトを行なう必要があるのか、目的を徹底的に検証する。それが大。次に、具体的に戦略やコンセプトを決定する。それが中。最後に依頼するデザイナーを選定したり、予算配分を考えたりと具体的なアクション。それが小。デザイナーと出会い“なにか作りましょう”と“小”からスタートしてしまうと、“大”である目的がはっきりしていないので結果が伴わなかったりする。もちろん、緊急を要することであれば“小”から行なうこともあります。いずれにしても、私の仕事は“コンセプトキーパー”であり“プロジェクトのファシリテーター”。根本をぶらさないように、しかし適宜プロジェクトを見直し全体をいい方向へ索引していくことが私の役割だと思っています。
___どうしたら根本をぶらさないでいられるのでしょう。
少し大げさに聞こえるかもしれませんが、世界や社会にとって必要なこと、正しいことをすることです。また、正しいことをいかに楽しく実行するか。これがとても重要だと思っています。そのためにも、世界の情勢や総体的に社会を知ることです。それと同時に、総合的な視野と、誰にも負けない専門分野をつくることです。
___最後にものづくりに関わる人、デザインに興味がある人へメッセージをお 願いします。
今、世界で起きていることと、自分の生きている毎日は決して無関係じゃないということを忘れないでほしい。実際には、正しいことだと思うことを貫くことが、自分自身が唯一生きのびる方法だと思っています。間違っていることと知りつつ、やりたくないことをお金のためだけにやり続けてしまう。そうすると、最終的に生き残れないんです。安くて何でもやる人や国は、次々と出てきますからね。そもそも、なんで自分はこの仕事をしているのか。そこを徹底的に追求することで、自分がやるべきことや、やりたいことが見えてくるはずです。僕の場合、人の欲望をつくることよりも、社会や世界の必要性を解決してゆくことを自分の仕事として選択しました。

立川氏の脳内グラフ

  • 人の間を走りながらプロジェクトの磁力を強めまとめあげていく
  • いろんな立場の人とも理解し、目的を共有し合う
  • project は閉じずに、螺旋状に拡がっていき終わりはない
  • project=desire<necessity 短期的な結果だけを追い求めず
  • 生活や社会の必要性を突き止め解決に向かう


    私の仕事への態度や考え方を図式化にすると、こんな感じだと思います。その流れで、お金やモノがついてくるイメージです。

立川裕大(たちかわゆうだい)
主に企業の外部ブレーンとしてデザイン戦略を全般的にサポートする。家具、照明、家電などのインテリア関連プロダクトの企画・商品開発ディレクションを軸に、市場分析、戦略策定、デザイナー選定、販路開拓、販売促進、アタッシュドプレスまで、デザインが世の中に入っていくまでに必要な環境整備を全プロセスにわたり携わる。手掛けるプロジェクトにおいては単にモノを生み出すだけにとどまらず、地域活性、環境、災害対策、弱者への配慮などの社会的な課題にも積極的に取り組んでいる。 漆や竹細工など、日本の伝統的手仕事と現代のデザインを結び付けながら、新たなプロダクトとイノベーションを生み出すプロジェクト「ubushina (ubushina.com)」を自社でプロデュース

立川氏の仕事道具

DANESEのペーパーナイフ
DANESEのペーパーナイフ
1962年にEnzo Mari(エンツォ・マーリ)氏がデザインしたペーパーナイフ。
20年以上、愛用している。
アキッレ・カスティリオーニ氏と同様、憧れのデザイナーだという
自転車 アレックスモールトン TSR-8
自転車 アレックスモールトン TSR-8
唯一、自分の持ち物でこだわって購入したという自転車。
「今、一番欲しいものは自転車専用レーン」と立川さん。
オリジナルの状態からカスタイマイズして愛用している
iPhone
iPhone
特に便利だと思っていることは、
外出先でWord、Excel、PDFなどのデータが見られること。
オフィス以外で仕事をする機会も多いので、本当に重宝しているという
街で出会ったガラクタ
街で出会ったガラクタ
古道具屋や骨董品屋でみつけた古い道具。
ここに掲載したものは、ほんの一部。
なんでこんな形しているんだろうと考えることで、
新たな発見にも繋がるのだという
バイブルのような存在の本
バイブルのような存在の本
左から「生きのびるためのデザイン」著:ヴィクター・パパネック(晶文社)、「宇宙船地球号操縦マニュアル」著:バック・ミンスターフラー (ちくま学芸文庫) この2冊は今から1960年代から1970年代に書かれた本。デザインやテクノロジーの発展による問題点を提議している。「まさに予言書です」と立川さん 「アキッレ・カスティリオーニ 自由の探求としてのデザイン」著者:多木陽介(AXIS)この本は立川さんのコーディネートにより完成。アキッレ・カスティリオーニの文献ともなる1冊
アーカイブ リスト
ID VOICE ARCHIVES
メルマガ 登録
MAIL MAGAZINE
サイトの新着記事・最新情報等、お手元にいち早くお届けします。ぜひご登録ください。

>登録はこちらから

このページのトップへ

COPYRIGHT© 2009 idsite ALLRIGHTSRESERVED.